【開催レポート中編】着物研究家 シーラ・クリフさんから学ぶもっと自由に、もっと楽しく!自分らしく生きる秘訣


猪熊:次の質問に行ってみましょうか。これは皆さんすごく知りたいことだと思うんですけど、シーラさんのすごく素敵な Instagram もそうですし今までの本もそうですし、今回皆さんにもサイン入りの最新刊をお送りさせて頂くんですけれども、シーラさんのお着物スタイルがどうやって完成するのか?お着物の選び方とか楽しみ方のコツだったりっていうところがあると思うんですが、次のスライドで、これも写真集の中から今回KIMONOBIJINさんがピックアップしてくださってすごい可愛いヘアスタイルもそうですし色使いも模様使いそうですけど、この可愛いスタイルがどうやって完成したのかを聞いていきたいなと思っています。3スタイルもあるので全部は難しいかもしれないですけど、どうやっていつもシーラさんの着物スタイルが完成するのか?是非お聞かせ頂けますか?


シーラ:はい。すごく色が大切だと思うんですよ。実は色は人間にすごく影響があるんです。例えば全部グレーの何もない保育園と、たくさん壁に絵を貼ったり色がついたりしている保育園とは、子供たちのムードが全然違ってくるという実験があったんですね。今の社会はどんどんグレーになっています。コンクリートがあちこちにあって、グレーとか紺とかベージュの服が増えています。例えばユニクロだったり、無地だったり、模様が無くなってきて色も無くなってきています。私は人間にとって自分を飾っていくのは本能だと思ってるんですよね。飾っていく必要はないんですけど、昔から人間が自分の身を飾っていたんですよね。色と模様がすごく大切だと思います。これによって幸せになるから。カラフルであったり華やかであったりすることによってすごく自分の気分を変えることができるので、すごく大切だと思います。なんとなく色の統一感が調和的なものを探していくといいです。みんなはシーラのコーディネートが派手と言うんですけど、着物だけ見ると全然派手じゃなくて地味な着物なんです。ちょっとコントラストを入れたり小物で華やかさとかコントラストをつけたりするときが多いですね。


猪熊:お着物と帯の色のリンクとかも可愛いですよね。


シーラ:そうですよね。左側のは梅がテーマなんですけど、着物にある色を帯とか小物で持ってきてあんまり色を足していないんです。その色を守って、その梅というテーマを大切にしてるんですよね。

真ん中のはちょっとポップな感じで、お茶目なフィーリングでやってみたんですけれどもね。着物にちょっと赤い線が入っていたので、赤を足してみました。ちょっとポップな感じの柄であまり伝統的な花柄じゃないので、規格的な模様の帯を足したりちょっと可愛いバッグとか帽子をつけてみたりとかですね。


猪熊:このタイツもすごく可愛い。タイツですか?ソックスですか?


シーラ:ソックスなんですけど、迷彩柄ソックスと書いてありました。


猪熊:お靴も着物の色合いとマッチしていてすごく可愛いですね。


シーラ:はい。右側のこのようなチェックは洋服で1950年くらいの女性のイメージが湧いてきましたので50年代の雰囲気を出したくて、ハッピーな主婦という感じにしました。ニコル・フィオレンティーノという女性が写真を全部撮ってくれたんですけど、彼女は髪の毛のセットもすごく上手で50年代のクローンの髪型を作ってくれました。すごく素敵ですよね。


猪熊:素敵です。この髪型もすごく可愛い。あとイヤリングの赤とか帯とかも。

シーラ:これは母のものなので、本当に50年代くらいのものですね。


猪熊:やっぱり最初にテーマがあって、50年代とか色のリンクだったりとか、意味合いのリンクみたいな感じでスタイルがまとまっていくんですね。

この次もかっこいいですよ。黒のかっこいいスタイルがどうやってできたのか知りたいです。


シーラ:これはデニムみたいな布で木綿ですから、バッジをつけても全然傷まないです。このバッジはAKIRA TIMESという方のバッジなんですけど、この着物を使ってちょっとパンクなイギリスをテーマにしたかったんですよ。パンクだから音楽で、頭にあるのは本当のレコードです。


猪熊:レコード!?レコードの穴の部分におだんごを通しているんですね?


シーラ:はい、穴が開いているのでそこに通しました。レコードのイヤリングも見つけました。


猪熊:この内襟は、お着物の半襟ですか?


シーラ:これは普通の布にアイロンでつける刺繍です。ここでは見えないんですけど、帯はユニオンジャックというイギリスの国旗の帯です。イギリスはパンクの産地なので、そんな感じで自分のルーツを描くコーディネートです。


猪熊:すごいですね。パッと見て皆さんから「かっこいい」とか「オシャレ」って絶対に言われると思います。でも自分で発想できるかと言われると、私は絶対にこんな発想できないと思うんですけど、すごく憧れるスタイルですね。

次は実際にシーラさんがお持ちのお帽子やお着物やお草履、それからブーツ等の一部ですね。


シーラ:はい。前のスタイルブックにはなかったものです。今回は『Sheila Kimono Style Plus』という名前をつけたんですけれども、Plusというのは例えばどのような小物を使ったかというページを作ったり、この履物は全部ではないんですけどこの履物をコーディネートの中に使っていますという説明があります。本の中ではこれらの帽子も使っています。これによって自分が持っている履物とか帽子の使い方を考えたり、ちょっと役に立つんじゃないかなって思いました。

皆さんは写真を見て「シーラはできるけど私はできない」という意見が結構あったので、前のスタイルブックにはなかったんですけど着ている写真だけじゃなくて、このコーディネートはどうやってできたっていうのを全部平らに置いて写真を撮ったものを入れました。これは結構可愛いと思っています。


猪熊:可愛いですよね。シーラさんって今はもうスタイルが確立されているんで自由に発想できると思うんですけど、着物と出会って少し着物を学んで少しずつ着物や小物とかが集まってきた初期の頃って、まず何かこういう発想でコーディネートをしていたというのはありますか?例えば最初は色から発想していたけどだんだんテーマ感とか模様に広がっていったとか。初心者の皆さんでも真似できるようなヒントを少しお伝えしたいなと思いました。


シーラ:一番最初はやっぱり着物スクール通りでした。普通の着付けで襟も白で、長襦袢も白でした。でもいろんな本を見ると昔はそうでもなかったというのが分かってきて、骨董市で買った赤い長襦袢を使いたかったのもあったからだんだん白襟は使わなくなりました。これは着物の半襟をたくさん買ったんじゃなくて、布を使っています。布を横に使うようになるので模様は襟の向きだったらどうなるか考えないといけないですが、好きな洋服生地で多分20cm単位くらいで買えますから、これだったら200円とか300円で買えます。あとは手ぬぐいを縦に半分に切って柄が小さい模様のものを使って色んな襟で冒険してみたんです。私が思うのは、一番最初は洋服の上に着てみてもいいと思います。


猪熊:お洋服の上に着物を着て楽しむということですね。


シーラ:例えばジーパンとかカットソー、襟がついてるとかフーディとかでもいいです。襟を付けないで着物の腰紐をしっかり結べば着られるから、そこからスタートしてもいいと思います。これをマスターしたら今度は長襦袢も入れて、もう一つの紐を結ぶことになります。このようなステップを踏まえてみてください。自分の周りにある靴から試してみてもいいですね。


猪熊:お帽子でも布でもいいですし、そこはすごく大切なところですよね。全て高価なお着物や小物を揃えないといろんなバリエーションが楽しめないわけではなくて、洋服の上になにか重ねてみたり、布を半襟の代わりにしてみたり、お洋服の靴とかブーツとかお帽子とかと組み合わせてみたり、既に持っているものと組み合わせながら楽しんでいくとたくさん持っていなくてもバリエーションが楽しめたりするのかなと思います。

後で質問でも出てくるかもしれないですけど、日本の皆さんがよく気にされるのは着物って最初は正当なルールがあるんですけど、そこから少し逸脱して自分らしく着ていったり自分らしく表現していくときに、他の人の目が気になったりしませんか?どうやって自分が素敵と思ったものを表現するような気持ちとか自信を持っていくのかを皆さん気にされてるようなんですけど、シーラさんはどうでしょう?


シーラ:ある意味では、私は最初から外れものなので変人と思われているから失敗しても許されるというか。


猪熊:自分のスタイルが許されるんですね。


シーラ:外国人だからしょうがないってあるかもしれないですよね。たくさんの着付けのビデオでこうじゃないといけないというのはいっぱいあります。日本人は周りの目を気にするんですけれども、私はいつも学生に「最初は下手に着てもいい」と言うんです。例えば自転車に乗っても、プールで泳いでも、何をしても最初は下手くそでかっこ悪いですよね。だから私は着物もかっこ悪くてもOKだと思います。「今日の洋服の着方は下手だね」って人は多分いないんじゃないですか?


猪熊:そうですね。言われることはないですね。


シーラ:だから着物にも言う権限はないんです。自分らしく着ればいいと思います。


猪熊:自分の発想とか工夫とかひらめきでやってみて着たときに「これ大丈夫かな?」と思っても、ちょっとお出かけしてみてたくさんいろんなコーディネート見たり、いろんな美しいもの見てるうちに何かまとまってきたぞ、これって私じゃないとできないスタイルだというのが多分確立されてくるのかなと思ったので、それを気にせずにまずやってみるというか、最初はまず下手かどうかというよりは自分のひらめきとかアイデアとか工夫を大切にするのが大事なのかなと思いました。


猪熊:お着物から少し離れるんですが、シーラさんの女性としての生き方、人としての生き方に憧れる方もたくさんいらっしゃるのでお聞きしてみたいんですが、シーラさんの人生においての信条やモットー、何か大切にしている言葉はありますでしょうか?


シーラ:大切にしていることを3つ考えたんですけど、1つは感謝の気持ち。例えばインスタでも誰かが「素敵」「美しいですね」と言うとか小さいことだけどやらなくてもいいじゃないですか。でもわざわざ言ってくれたのはすごくありがたいので、なるべくみんなにありがとうって言うことは大切だと思います。自分がここにいるのはやっぱり自分の努力だけじゃなくいろんな人が認めてくれたからここにいると思うので、常に感謝の気持ちです。着物に出会ったから今すごく満足できる生き方というか本当に豊かだと思います。いろいろ苦労することがあるんですけど本当に恵まれていると思うので、絶対に感謝の気持ちは忘れてはいけないと思います。みんな大変、みんな一緒に大変なんだから、私は文句を言ってはいけないと思う。(笑)本当に感謝の気持ちはとっても大事だと思います。

もう1つはちょっと日本人らしいかもしれないんですけど 、ネバーギブアップ。私は着物を好きになって素敵な着物の本があるといいなって思っていました。私は理想の着物の本がないから本を書きたいと思っていろんな出版社に手紙を書いたんですね。でもアフリカの布とかサファリの服についての本があるのに、みんな「着物の本は売れないと思います」って返事が来て。でもそこで諦めたら着物の本を作れなかったけど、まぁしょうがないじゃなくてずっとその夢を持っていました。出版社は来てくれないから、博士課程を取ることにしました。働きながらイギリスで博士課程を取ったんです。博士課程を取って、それでもう1回出版社にあたって『The Social Life of Kimono』という本を出版できたんですけど、最初に夢を持ってからこの本を出版するまでは20年間かかりました。


猪熊:そんなに長い時間がかかったんですか!


シーラ:はい。20年間その夢を持っていたので、その夢を捨てないでずっとやり続けること。その方法が成功ではないなら別の方法を考え続ける。私は頑固かもしれないんですけど、私の人生の中ではこのネバーギブアップの精神が結構大切だったと思います。

3つ目は、素敵なことは全部神様から頂いたと思うのでぎゅーっと手で握るのではなく、手を開いていたほうがいいと思うんです。無くなるかもしれないけどもし持っているものが無くなっても、このことがあったから幸せだったっていうのを思い出せるじゃないですか。子供たちが小さいときからいつも留学生を家に入れて家をシェアしていました。今も家をシェアしているんですけど、それはやっぱり一人だけで使ってもいいんですけど、みんなで使った方が楽しいから。みんなちゃんと着物を持っているんですけど自分だけで使うんじゃなくて、別の人に貸してあげたり別の人に着付けすると着物も喜ぶと思うし、その人たちが幸せになるからシェアして共に使うことによって楽しさとか幸せが倍になると思うんですよ。


猪熊:自分だけのものじゃなくて皆さんと分け合ったり、ぎゅーっと握るんじゃなくてフッと自分のもとに降りてきたものを受け入れて大切にしたりとか、確かに本当にシーラさんは日本人的なお心の部分もすごくおありになるんだなって思いました。


シーラ:そうですか?これは日本だけですか?


猪熊:いえ多分海外の方にもあると思いますし、今日異文化交流にもご興味がある方もいらっしゃるので詳しい方がいればお話し聞いてみたいですね。本当に昔の古き良き日本が大切にしてきた思いやりの気持ちと感謝の気持ちとか、受け入れる気持ちとか、自分だけのものじゃなく皆と共にみたいなことをすごく自然と大切にされていて、そう生きられてきたんだなという風に感じました。ありがとうございます。


<後編に続く>